音楽・サーフィン・リモートワーク! 周りを気にしない広大な空がある鉾田市。住むなら海の近くが良い!
Profile
立花礼奈さん(42歳)
※取材:2022年12月
九州出身の一生さんと大阪出身の礼奈さんは東京で出会い2017年に結婚。2022年1月に鉾田市に移住。自然に囲まれた素敵なお家で4歳の息子さんと3人暮らしを満喫している。
強い意志で決めていた移住という選択
一生さん:少し前から東京を出たいなと思っていたんです。仕事のきりが良かったのと、子供が生まれたということもあり、もうちょっと開放的でストレスを感じないところに住みたいなと思いまして。
礼奈さん:彼が2021年の年明けに、急に深刻な顔で「移住したい」と伝えてきました。元々東京を離れたいというのは聞いていたのですが、子供も保育園に入って私も仕事に復帰し、ようやく生活も軌道に乗ったと感じていたところだったので、まさかのこのタイミングか!と動揺しました。
一生さん:移住先が鉾田市になったのは偶然でした。当時、同じ東京に住んでいた料理人の友人が鹿嶋市(鉾田市の南)に引っ越してお店を出すというので、店の内装工事を手伝うために、初めて茨城に行きました。店外で休憩していたら、通りがかりの自転車に乗った見た目の怖いお兄さんが「こんにちはっ!」って元気よく挨拶してくれて、その後に通った小学生くらいの子も同じく挨拶してくれて。見ず知らずの人に挨拶をするのは都市ではなかなかハードルが高いですよね。でもこちらでは挨拶をするという当たり前のことが自然にできる環境なんだと、とても良い印象をもちました。
礼奈さん:そのこともあって不動産サイトで茨城方面で検索していたら、たまたまこの鉾田市の物件があって、軽い気持ちで内見予約をしたんです。そのときはもちろん鉾田方面に来るのも初めてでしたし、『鉾田』ってなんて読むんだろうレベルです(笑)。
一生さん:実際に見て感覚的にここだと思いました。ギターなど楽器も弾くのですが、周りを気にしない環境が良かったので、「自分が求めていた場所だ!」と。
礼奈さん:「森の中にポツンと家がある!ジブリだ!!」と夫婦で大笑い。だけど、住むとなると私は色々現実的なことを考えましたね。今まで作りあげてきた環境や仕事を一度全て手放してこちらに来るっていうのは、なかなか踏ん切りがつかなくて何度も話し合いをしました。
私が移住を決心したのは、結婚・出産を経て、さらにコロナ禍で世界中が激動し、自分の中で豊かさの価値観が大きく変わったこともあると思います。また彼の移住への意志に対抗できるような、都市生活に固執する理由が私にはなかったし、流れに任せてみようかなと思いました。ただ「お互いが納得できる移住先が見つかるまで焦らずにじっくり探すこと」が私からの移住条件だったのですが、結果なんと初見の鉾田一発決め(笑)。不安はありましたが、きっとそこで家族みんなが健やかに暮らせる未来がイメージできたのだと思います。
勤め先に退職を申し出ると、有難いことに業務委託という勤務形態を提案されました。それは、コロナ禍で加速したリモートワーク普及の流れが大いに関係したと思います。会社の柔軟な雇用システムのおかげで、リモートで仕事を継続しながら移住することができました。今は隔週で東京の本社に通っています。 遠いかと思ったのですが、潮来市から東京までノンストップバスが出ているので、思っていたより移動が負担ではありません。鉾田で穏やかな暮らしをしつつ、 東京にも行くことができるので、私的にはとてもバランスが良いと感じています。
移住から1年、五感で感じた鉾田の四季
一生さん:ここは海が近いので、こっちに来てからサーフィンも始めました。森を出て車で少し走ると広大な海があって最高の環境ですよ! あと、四季もすごく感じますね。僕は空も好きなのですが、鉾田は関東平野なので空がすごく広いです。冬は朝焼けを見れたり、色味とか雲の形なども四季それぞれで全く違う。東京じゃ感じられないですよね。森に囲まれた家では、秋、朝起きると車が落ち葉に埋まっていたり、野鳥も沢山いて、鶯なんて大合唱です。夏びっくりしたのが朝方4時にひぐらしが一斉に鳴き出して猛烈な大合唱が始まって寝られなくて布団を被って耳を塞いでいましたよ、風情も何もない(笑)。
礼奈さん:移住したばかりの頃は問題だらけでした。インターネット回線を引く配線場所に森の木が被さっているから、持主の許可が無いと工事ができないと言われ「ネットが繋がらなかったら仕事もできなーい!!」ってパニックでした(笑)。その他、水・電気・ゴミなどのインフラ問題や、自然や虫達の脅威に直面して大困惑。だけど自治体や地域の皆様、専門業者の方々に助けていただきながらなんとか奮闘しました。私はずっと都会暮らしだったので、何も知らずに生きてきたのだな…と、うちのめされました。便利な都市の暮らしでは得られかった経験と知恵が培え、自然から様々なことを学びつつ、世の人々の仕事に感謝の日々です。
そしてこちらでは車はマストです。私はペーパードライバーだったのでその点も心配していましたが、今ではドライブの時間が癒しのひとときとなっています。都市のような渋滞も狭苦しく複雑な道路もなく、広大な空と豊かな自然の中を車で走っていると、とても気持ちが良いです。あたたかい季節になると窓を全開にして走っています。たまに強烈な、いわゆる“田舎の香水”のにおいで「うわ~クサァァァァ!!!」となって焦って窓を閉めるのものどかなシーンですよね。
音楽とデザインで鉾田を盛り上げたい
一生さん:実は、もう少し音楽の文化が鉾田にあってほしいなと思っています。こっちに引っ越してきてからいろんな茨城のミュージシャンの方々と知り合いまして、一緒にライブをしたりするのですが、とても面白い人が多いんですよ。海も近いのでライブするロケーションもバッチリなのですが、ちゃんとしたスタジオなどがあまりないね、と良く皆で話しています。もしそこが整ってくれば、もっといろんなミュージシャンが鉾田に来て、更に面白くなっていくのではないかなと思います。そのために自分も動けたらいいなと思います。
礼奈さん:鉾田の野菜や果物は本当に美味しいです!季節折々の旬の食材が並ぶ直売所やスーパーを巡るのが楽しくて。上京時は会社の同僚や友人に特産の干し芋を配ったりしているのですがこれが大好評!お江戸に芋を運ぶ商人みたいになってますよ(笑)。私達は移住してから鉾田を知ったパターンなのですが、意外と外から来た人間の方がその土地の素敵なところや問題点がよく見えるような気がします。
一生さん:息子が通うはずだった近所の小学校が移住後に廃校となり少子化問題を目の当たりにしました。若い世代も安心して移り住める魅力のあるまちにしていく課題もあるのかなと感じています。
礼奈さん:私はデザインのお仕事に携わっているのでゆくゆくは鉾田の魅力を発信したり、より豊かに暮らせるまちづくりのツールを作れたらと考えています。その前に手が行き届いていない荒れた自宅のお庭をキレイにしないと…まずはそこからですね。
息子は前の保育園でも「フルーツ王子」と呼ばれていたほどの大の果物好きです。こちらの保育園でも「園庭の柿をこっそり食べ尽くしていましたよ」と言われました。苺もメロンも大好きな息子がこのフルーツ王国鉾田に来ていちばん謳歌しているのではないでしょ
うか(笑)。