先輩インタビュー

広い土地、ベテランの先生、行政の支援のもと、「農ビジネス」へのトライを続行中

広い土地、ベテランの先生、行政の支援のもと、「農ビジネス」へのトライを続行中

Profile

太田健さん(56歳)

家庭内の経済的リスクを回避するべく、単身鉾田へ。

太田さんが家族と離れて鉾田で暮らすようになった最初の契機は、リーマンショックにありました。移住する前は、妻は公務員、太田さんは大手企業でエンジニアとして共働きをしていた普通の家庭。でも「一生サラリーマンをやる感じじゃないな、と薄々感じていました」という太田さんは、2008年のリーマンショック後に早期退職。その後、1年間子育てに専念し、保育園の送り迎えや夕飯づくり、趣味のサーフィンに時間を充てていたそう。「主夫としての1年、本当に幸せだった」と語る太田さんですが、退職後1年が経ち、再度働きたくなった頃、仕事の候補に挙がったのが”農業”でした。

我々にとって大切な第一次産業にもかかわらず、若い人が定着しづらく、後継者不足に悩まされる農業。「人がやりたくないならば、自分がやってみよう!」という意気込みで、退職金を元手に参入を決意。しかし、“脱サラ”して農業をする人は多いものの、挑戦したほとんどの方が脱落するのが実情です。農業経験者ではなかった太田さんは「自分のチャレンジに家族を巻き込むわけにいかない」という想いで、共働きの継続を選択。“鉾田愛”にあふれる太田さんは鉾田、家族は埼玉県に住民票を置くことになりました。離れ離れであっても太田さんが月2回ほど埼玉に帰り、家族の仲は円満。妻も子どもも鉾田での就農を応援してくれています。

行政の制度を利用することで、スムーズに参入成功。

前職の関係で鉾田市に合併前の旭村へ訪れていたとき、「立派な家が多い鉾田の農家さんを見て、ここでなら稼げるのでは?と勝手なイメージを持っていました」と太田さんは笑いますが、縁もゆかりもない土地に単身乗り込み、新しい事業を行うのは参入障壁が高いのが一般的。

そんな中、太田さんは国の「第三者農業経営継承」という制度を利用。農業をやりたい人と引退したい人を結び付け、農業の継承を推進する制度により、鉾田でホームセンター向けの野菜苗を作っていた農家さんに出会います。その後1年間ほど研修を受け、経営ごと譲渡が決定。生産方法や販路、トラクターやビニールハウスも含めて譲り受けたことで、資金繰りや販路開拓などの心配もなく、比較的スムーズに農業に参入することができました。それでも、自分の休みがない、人を雇用した場合の労務管理などの問題に直面し、「これでは若い人がやりたがらないなあ…」と、農業経営の大変さが当初身にしみたそうです。

成功者からコツを教わる。
5〜6年後に「これはいける!」と実感。

太田さんがリタイア組にならずに済んだ理由の一つは、「勝手に生徒になるのが得意なんです(笑)」という積極的な性格。家庭菜園の基礎は本から学び、それ以外の不明点を成功している農家さんにどんどん聞きに行くことで、プロフェッショナルな先輩方との関係性を深めていきます。並行して、新たな販路や商品も開拓。初めはホームセンター向けの野菜苗のみを大量生産・大量販売で売り上げを立てていましたが、利益率が12〜13%と低いことから生産者向け苗の生産も開始しました。その際も、地元で著名なメロン作りの栽培農家さんへ弟子入り。2か月ほどかけて、メロンの接ぎ木苗の方法を教わり、のれん分けをしてもらうまでに至りました。そういった先人たちからの教えの中で”稼ぎ方”を体得。5〜6年経った頃、ほうれん草やトマトの生産にも着手し、「何をどうしたら良いかわかってきたので、農業で食べていける!」と実感し、さらなる設備投資に踏み切ったそうです

努力次第で年商をどんどんアップさせることも
可能な“農ビジネス”

現在、太田さんは年商4000万円超えのプレイヤー。外国人技能実習生や日本人従業員も抱える経営者です。初年度の700万円から始まり、右肩上がりに成長する農家さんとして活躍しています。売上を増やすには、ハウスを作って作付面積や雇用を増やすのが肝。50代のうちに設備投資を終えて、その後5年ほどは拡大経営したい。つまり農業を戦略的なビジネスとして捉えることが大事なのです」。

しかし、現在56歳という年齢も考慮し、売上を伸ばすだけでなくワークライフバランスも重視。労働時間を短縮し、週休2日を取り入れ“ホワイト農家”を目指しています。自身も「置かれた立場で、どう楽しく生きていくかは自分次第」という信条のもと、時期によっては午後3時には仕事を終えて海へ行き、7時までサーフィンに熱中することも。サラリーマン時代には叶わなかった、自由で健康的な生活を実現しているのです。

農業をやるなら鉾田は最高。
今度は自分が教える側になる。

鉾田の魅力は、土地・人・行政の三本柱が揃っていること。土地があり、教えを乞うことができるベテランの先人たちがいて、行政の支援も充実しています。移住者の側から真剣な態度で臨み、胸襟を開いて先輩たちの元に飛び込んでいくことで、現地での縁や可能性が広がっていくのでしょう。「農業にチャレンジしたい方には、農業の酸いも甘いも教えますよ」という太田さん。今は教える側になって、農業の新規参入者を応援します。

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